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建設コンサルタントになるために技術士の資格を取得すべきか迷っている方へ、技術士の資格とは何か、基礎知識や仕事内容をまとめました。資格を取得しても役に立たないと言われる理由や資格取得のメリット、試験内容や取得後の流れについて解説しています。
技術士とは、科学技術に関する高度な専門的応用能力を持つ、文部科学省認定の国家資格です。
分かりやすく言うと各専門分野におけるスペシャリストの試験で、産業経済、社会生活の科学技術に関するすべての分野をカバーしており、建設部門や上下水道部門、機械部門、環境部門など21部門に分かれています。
技術士の試験で、もっとも受験者数が多いのは建設部門です。技術士の資格があると、建設コンサルタントとして土木に関する計画や研究、設計、分析、試験、評価に関する指導ができるようになります。そのため、組織によっては資格を持つことが前提になっているところもあります。
建設に携わる人にとって、権威のある国家資格を持つ技術士。にも関わらず、資格を取得しても役に立たないと言われることがあります。
そもそも技術士の資格の知名度の低さが役に立たないと言われる理由のひとつです。公共事業を行う役所や建設・土木業界において知名度はあるものの、建築士や危険物取扱者などの資格に比べると広く知られているわけではありません。
一般にはあまり耳なじみのないことから「役に立たない」と思われているだけで、建設業界では一目置かれる資格となっています。
弁護士や税理士のような、いわゆる士業とは異なり、資格を持っていなくても建設の仕事には携われる点が「役に立たない」と言われるもうひとつの理由です。
技術士は、資格を持っていなくてもスキルさえあれば業務を遂行できます。仕事を行う上で必須ではないことから、資格そのものがあまり評価されていないと考えられます。
技術士の資格を取得すると、今まで以上に義務や責任が発生します。
例えば、技術士は技術士の信用を傷つけたり不名誉となる行為をしたりしてはなりません。業務の秘密を漏らす、盗用するなどはもってのほかです。また、公共の安全や環境の保全など、公益を害することがないように努めなくてはなりません。さらに、資格取得後も継続して資質を向上させる努力も求められるのです。
これらの義務や責務に見合うメリットが得られない人にとっては、技術士になること自体が避けられる要因となります。
技術士に合格するには、広範囲にわたる知識を備えなくてはなりません。ただ、試験のために学んだすべての項目が、今の仕事に役立つとは限りません。実務と技術士としての知識に乖離があると、仕事に活かせない理由から取得しない方向に考えが傾くと考えられます。
技術士は、資格を取るまでに10年近い年月がかかります。第二次試験に出願する要件として、「7年を超える実務経験」があり、ほとんどの方が7年を超える実務経験をもって第二次試験にのぞむからです。さらに、第二次試験は出願から合格発表までに1年を要します。合格後の技術士登録手続きまで含めると1年を超えるため、最短合格のケースでも8年以上はかかります。資格を取るまでの期間の長さも役に立たないと言われる理由のひとつです。
業務独占資格とは、例えば医師や弁護士のように、その職業へ就くための専門資格を取得していなければ働くことさえできないという業務やその資格を指します。一方、技術士は専門資格ではあるものの、仕事をする最低条件として設定されているものではありません。
言い換えれば、医師国家資格や弁護士資格を取得している人であれば医療業務や弁護士業務を独占的に行えますが、技術士の資格を取得しているからといって関連業務を独占できないということです。
技術士の資格を取得するメリットを知っておくと、「役に立たない」という考えを変えられるかもしれません。実際に、技術士になるとさまざまなメリットを得られます。
技術士になるには、択一式の第一次試験に加え、筆記試験・口頭試験の第二次試験をすべてクリアしなくてはなりません。また、多くの資格とはちがって、実務経験と実務に伴う知識や能力も求められます。資格そのものが豊富な経験と高い能力を備えた証となるため、高い信頼を得られるでしょう。
建設業界は技術士にとって重要な業界であり、技術士の資格保有者の多くがゼネコンなど建設系の会社や企業の建設部門で活躍していることは見逃せません。また、技術士の技術部門においても建設業界と関連性のある部門が存在しており、例えば公共工事の入札参加資格に関しても所属している技術士取得者の人数が経営事項審査項目の1つとして評価対象になることは重要です。
中には技術士資格が入札参加要件に定められることもあり、建設会社や建設業界にとって技術士は欠かせない資格の1つといえるでしょう。
IT業界に関連した技術士の部門として「情報工学部門」が設置されています。
そもそもIT業界に関連した専門資格は国家資格から民間資格まで様々なものが存在しており、技術士(情報工学部門)は比較的マイナーな資格と言えるかも知れません。しかし、例えば政府情報システムの業務へ携わる入札参加要件には技術士(情報工学部門または総合技術監理部門)が記載されていることもあり、IT業界において必須資格でないものの取得していれば有利になる資格といえます。
これまで以上に収入が期待できるのも資格を持つメリットのひとつです。会社勤めの方が資格を持っていると、資格手当が支給されます。企業によっては技術士に毎月7万円以上の手当を支給しているところもあり、毎月の収入を確実にアップできる方法です。
また、技術士としての能力を認められ、今よりも責任ある仕事を任される可能性があります。企業によっては、技術士の資格取得が昇進条件になっているところもあるため、業務で高い評価を得られれば基本給アップやさらなる昇進にもつながります。
技術士になると、「日本技術士会」の入会資格が付与されます。日本技術士会は全国に30の支部がある団体で、グループ活動に参加すれば会員同士で交流する機会があります。同じ分野の技術士はもちろん、異なる分野の技術士とも出会えます。高いレベルで活躍する人たちの人脈を得られるチャンスです。
仕事に役立つ知識や業界の最新情報、他分野におけるビジネスに関する情報など、人脈の開拓は今後の自分にとってさまざまなプラスになると考えられます。
技術者の資格を取得すると、より専門的な技術者を目指せます。建設部門の技術者の場合、建設現場の監理技術者や主任技術者、専任技術者が代表的です。
例えば、土木一式工事やとび・土木・コンクリート工事、電気工事、鋼構造物工事など、舗装工事、しゅんせつ工事、造園工事などの建設工事では、監理技術者に就くことができます。
また、建設現場では、各営業所に監理技術者、または主任技術者の配置が義務付けられています。技術者の資格を持つことによってこれらの仕事を任されやすくなり、仕事の幅が広がるでしょう。
日本技術士会でもっとも多いのが建設部門の技術士ですが、登録者の人数は全国に約5万人、正会員数は7,000人程度にとどまります。技術士自体の数が少ないため、、業界での転職では資格を持たない人材よりも有利となる可能性が高いです。将来の転職も視野にキャリアづくりを行いたいのであれば、取得して損はない資格と言えます。
そもそもエンジニアは、技術力がないと仕事を受注することができません。技術士の資格は技術力の高さを証明するものなので、独立して仕事を受けたい際にも役立つでしょう。
日本技術士会では、技術士会員に対して技術士業務を開業するための研修会も開催されています。独立の際には日本技術士会のバックアップを受けて、経営に必要な知識やノウハウも身につけられます。
技術士の資格を持っていると、他の資格試験を得られるメリットがあります。消防設備士や労働安全コンサルタント、労働衛生コンサルタント、作業環境測量士などが代表例です。弁理士や施工管理技士、地すべり防止工事士では試験の一部も免除されるため、受験しやすくゼロから目指すよりも資格を得やすくなります。
建設業界やIT業界における技術士の資格取得者の重要性について上述したように、そもそも公共入札の中には技術士資格の存在が入札参加要件になっていたり、入札で有利に評価されるポイントの1つになっていたりするケースもあります。
技術士試験で特に求められるのは、問題解決能力と課題遂行応力です。そのため、以下の仕事に就きたい方は、技術士を目指す価値があると言えます。
技術士は、その分野のプロフェッショナルであることを証明できます。将来的に業界のコンサルタントを目指すのであれば、技術士は非常に有効な資格です。特に建設コンサルタントになる場合、監理技術者となるためには技術士の資格が必要となります。
国や地方自治体の工事を請け負うには、入札に参加しなくてはなりません。入札に参加するには指定された条件を満たす必要があり、その中に技術士の配置が求められるケースがあります。技術士を確保できないと、工事の受注すらできない可能性さえあるのです。
国や地方自治体から請け負う工事をする人、または受注する会社に勤めているなら技術士の資格が役立ちます。組織によっては、会社側から資格取得を求められる場合もあります。
技術士は、高いスキルや専門知識だけでなく、長い実務経験も必要な資格です。資格を取得することによって、長年にわたってその業界で活躍してきたことの証明になり、高い信頼につながります。プロの技術者として信頼される人材になりたいなら、資格取得を目指すのもひとつの手です。
技術士は文部科学省が定めた以下の21部門に分かれています。
技術士の中に「技術士補」と名乗る人がいますが、技術士とは異なります。技術士補は一次試験に合格した人、または指定大学で「日本技術者教育認定機構」認定課程を修了した人を指すもので、登録制の資格です。登録せずに実務経験を重ねる「習得技術者」と同じ段階にいて、役割も同じとなります。
ここからは、技術士試験の内容について詳しく解説します。
技術士第一次試験は、科学技術全般の基礎的な知識があるか、技術士としての適性かを判定するための試験です。試験の実施は年に1回で、試験科目は「基礎科目」「適性科目」「専門科目」の3科目。マークシートによる択一方式で、基礎科目と適性科目は部門共通で出題されます。専門科目については、受験時に選択した部門ごとの出題です。
受験資格の制限はなく、年齢や実務経験の有無を問わずに受験可能です。なお、大学等で指定された教育課程(JABEE認定コース)を修了している人は、第一次試験の受験が免除となります。
第一次試験に合格する、またはJABEE認定コースを修了すると「習得技術者」となります。さらに技術士補登録をすれば「技術士補」と名乗れるようになります。
第二次試験は、第一次試験とは異なり受験するために満たすべき条件があります。第二次試験を受験できるのは第一次試験に合格するかJABEE認定コースを修了し、なおかつ一定期間の科学技術に関する実務経験を積んだ人のみで、必要な実務経験は以下の通りとなります。
なお、上記いずれの場合も理系大学院の修士課程に在学していた人は2年までを実務経験の期間に算入できます。また、1.2の実務経験は合算でき、3は習得技術者となる前の経験も参入できます。
第二次試験の試験内容は、必須科目と選択科目の筆記試験と、口頭試験です。
必須試験は択一式と記述式試験で、専門技術に関する出題に対して600字詰試験用原稿用紙に原文の答案を作成する必要があります。
筆記試験に合格すると口頭試験を受験できます。技術士としての適格性が判定される試験で、これら筆記試験と口頭試験の両方に合格してはじめて第二次試験合格となります。もし筆記試験に合格して口頭試験に不合格となった場合、再受験の際にも筆記試験は免除されません。再び筆記試験から受験する必要があります。
なお、第一次試験と第二次試験は同じ技術部門で受験する必要はありません。例えば、第一次試験は「情報工学部門」を受験して合格し、第二次試験は「電気部門」で受験するといった組み合わせも可能です。
第二次試験に合格後は公益社団法人「日本技術士会」に登録申請を行います。技術士登録簿に登録されれば、晴れて技術士と名乗ることができます。
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